介護の求人票を何件か読んでいると、不思議なことに気づきます。
「未経験歓迎」「丁寧に指導します」「アットホームな職場」「資格取得支援あり」
どの会社も、同じ言葉を使っている。
条件面も読みました。年間休日、残業時間、夜勤の回数。会社によって差はあります。
でも求人票の「言葉」だけ見ると、どの会社が書いたのか区別がつきません。
実際に介護の求人票をいくつも並べて読んでみましたが、タイトルも冒頭も、驚くほど似ていました。
これは、書いている側の問題ではありません。介護業界で「求人票に書くべきこと」を考えると、自然と同じ言葉に収束してしまう。
結果として、どの会社も「いい会社そうだけど、違いがわからない」という状態になっている。
今回取り上げるのは、従業員約40名の介護事業所の求人票です。年間休日119日、残業月8時間、出戻り社員がいるほどの職場環境。条件も中身も良い。
でもこの求人票にも、同じことが起きていました。
どこが問題で、どう直せば「他と同じ」から抜け出せるのか。具体的に見ていきます。
※本記事の求人票は、実在の求人票をもとに業界・条件・企業情報等を変更したモデルケースです。実在の特定企業を指すものではありません。
今回の会社と求人票について
まず、今回モデルにした会社の概要です。
- 業界:介護(介護付き有料老人ホーム)
- 従業員数:約40名
- 所在地:東北地方
- 採用体制:人事専任者はおらず、施設長が採用も兼務
- 採用媒体:求人サイトに掲載
中小の介護事業所としては、よくある規模感です。
そして、求人票の内容はこうでした。
- 職種:介護職(未経験歓迎)
- 年収:240〜340万円(月給18.3〜24.6万円+賞与2ヶ月)
- 年間休日:119日(月10日休み)
- 残業:月平均8時間
- 夜勤:あり(手当5,000円/回)
- 特徴:出戻り社員がいるほどの職場環境。資格取得支援制度あり
年収だけを見ると「高い」とは言えません。
でも、年間休日119日で残業月8時間、週休2日。介護業界の中では、かなり恵まれた条件です。
しかも、一度辞めた社員が戻ってくるほどの職場環境。
これだけの材料がそろっていて、応募が来ないとしたら、問題は条件ではなく、求人票の書き方にあります。
まず、この求人票の良い点
添削に入る前に、この求人票の良い点も伝えておきます。
条件面のバランスが良い
年間休日119日、残業月8時間、週休2日。介護業界で「休みが少ない」「残業が多い」というイメージを持つ求職者にとって、この条件は十分に魅力的です。
組織構成を具体的に書いている
「介護スタッフ約20名、20代〜50代まで幅広い年齢層」と書かれていました。人数や年齢層がわかるだけで、求職者は職場の雰囲気をイメージしやすくなります。これを書いていない求人票は多いので、ここは良い点です。
出戻り社員がいるという事実
「一度退職した社員の出戻り入社もあり」と記載されていました。これは、職場環境の良さを証明する最強のエピソードです。
条件、職場環境、出戻り社員というエピソード。この会社には、他の介護求人にはない武器がそろっています。
ただ、導入で触れた話を思い出してください。介護の求人票は、どの会社も同じ言葉で書かれている。
この会社の求人票も、その中の1件になってしまっている。
「出戻り社員がいる」という他社にない事実を持っているのに、求職者に届く前に、似たような求人の中に埋もれている状態です。
では、具体的にどこが問題なのか。1つずつ見ていきます。
添削ポイント①:求人タイトル——記号と条件の羅列で、何も引っかからない
導入で、介護の求人票はどの会社も同じ言葉を使っていると書きました。
その影響が一番出るのが、タイトルです。
実際に求人サイトで介護職を検索すると、タイトルの大半がこうなっています。
「未経験歓迎/残業少/年休○○日/資格取得支援」
今回の求人票のタイトルも、同じパターンでした。
変更前:
【未経験歓迎】ヘルパー・介護職◆正社員/無資格からのチャレンジOK/年休119日/残業少◇

介護の求人票をいくつも読んでいて気づいたのは、タイトルに「この会社ならでは」の情報がほとんど入っていないということです。
このタイトルを見てみてください。
「未経験歓迎」と「無資格からのチャレンジOK」が入っていますが、これは同じことを言っています。限られた文字数で、同じメッセージを2回使ってしまっている。
「残業少」も気になります。月5時間なのか月20時間なのかで印象はまったく違う。でも「少」としか書いていない。これでは何も伝わりません。
記号の「◆」「◇」も、見た目を整えたい気持ちはわかりますが、情報を伝える機能はありません。
つまりこのタイトルは、どの介護求人にも書いてあることだけで構成されている。
この会社には「出戻り社員がいる」という、他社には絶対に書けない事実があります。でもそれがタイトルに入っていない。
求職者が求人一覧をスクロールしているとき、条件の羅列では指は止まりません。「ん?」と思わせる情報があって初めて、クリックされます
どう直すか
変更後:
年間休日119日・残業月8時間|一度辞めた社員が戻ってくる介護施設|未経験歓迎

変えたポイントは3つです。
「残業少」を「残業月8時間」に変えた
具体的な数字は、それだけで信頼感を生みます。「少」は主観ですが、「月8時間」は事実です。
「出戻り社員がいる」をタイトルに入れた
タイトルに何を入れるかを考えるとき、私はまず「この会社にしかない情報は何か」を探します。
条件面(年間休日119日、残業月8時間)は強い。でも、他の介護求人にも似た条件はあります。
一方で「一度辞めた社員が戻ってくる」は、この会社だけの事実です。しかも、未経験の求職者が最も不安に感じる「この職場で続けられるか」「人間関係は大丈夫か」を一発で解消できる。
だからこれをタイトルに入れました。
記号の装飾をやめた
記号を外して、言葉そのもので勝負する。
そして、順番にも意味があります。
「年間休日119日・残業月8時間」を先に置いたのは、数字は一瞬で頭に入るからです。求人一覧をスクロールしている手を、まず数字で止める。
「一度辞めた社員が戻ってくる」は、読んで「なんで?」と考えさせる力があります。でも、理解に一瞬かかる。だからこそ、先に数字で手を止めたあとに置く。
この順番が、クリックにつながります。
添削ポイント②:本文の冒頭——タイトルの繰り返しで、読む理由がなくなる
タイトルを変えて、「一度辞めた社員が戻ってくる介護施設」で興味を引き、求職者がクリックしたとします。
次に目に入るのは、本文の冒頭です。
ここが、タイトルで生まれた期待に応えられるかどうかの分かれ目になります。
今回の求人票の冒頭は、こうなっていました。
変更前:
~未経験・新卒・ブランクある方歓迎!/20~50代まで幅広い世代が活躍中/手当充実で安心◎/資格取得支援制度アリでスキルアップが叶う~

介護の求人票を読んでいると、冒頭がタイトルの繰り返しになっているケースが本当に多い。今回もそうです。
「未経験歓迎」「手当充実」「資格取得支援」。全部タイトルに書いてあったことです。
タイトルで生まれた期待に、冒頭が何も応えていない。
「一度辞めた社員が戻ってくる」を見てクリックした求職者が最初に知りたいのは、「なんで戻ってくるの?」です。
その答えがないまま、タイトルと同じ条件がもう一度並んでいる。「思ったのと違うな」と感じた時点で、スクロールは止まります。
どう直すか
タイトルを「年間休日119日・残業月8時間|一度辞めた社員が戻ってくる介護施設」に変えた前提で考えます。
求職者がこのタイトルを見て最初に気になるのは、「なんで辞めた人が戻ってくるんだろう?」です。
なら、冒頭はその答えから始める。
変更後:
なぜ、一度辞めた社員が戻ってくるのか。
スタッフ同士の食事会やサークル活動がある。困ったことがあればすぐに先輩に相談できる。この施設には、数字には表れない「居心地の良さ」があります。
介護スタッフ約20名、20代から50代まで幅広い年齢層のチームです。

タイトルの「一度辞めた社員が戻ってくる」に対して、冒頭で「なぜ?」を投げかけ、具体的な事実で答えています。
「なぜ?」→「こういう職場だから」→「チームの構成はこう」。
この流れがあるだけで、求職者は「もう少し読んでみよう」と思えます。
添削ポイント③:「求人の魅力」——◎の連発で、結局どれも印象に残らない
求人票の中盤に、「求人の魅力」というセクションがありました。
変更前:
◎年間休日は119日・週休2日制のため、プライベートの時間もしっかり確保できます!
◎各種手当や研修制度が整っており、安心して働くことができる環境が整えられています。
◎無資格でも応募可能、かつ資格取得支援制度があります!働きながらスキルアップが叶う環境です
一見、魅力がまとまっているように見えます。
でも、読んでみてどうでしょうか。
全部「◎」で始まって、全部同じテンションで書かれている。読み終わった後に、何が一番の売りだったか思い出せません。
介護の求人票を読んでいると、この「◎で魅力を並べる」書き方は本当によく見かけます。
「未経験歓迎」「丁寧な指導」「資格取得支援」
どの会社も、ほぼ同じ言葉を同じ並べ方で書いている。
全部を同じ重さで並べると、どれが一番の売りなのかがわからなくなる。 求職者の頭には「いろいろ書いてあるな」としか残りません。
さらに、中身を見ると「安心して働くことができる環境が整えられています」「スキルアップが叶う環境です」と、抽象的な言葉で締めている。
具体的に何がどう安心なのか、どうスキルアップできるのかが見えません。
どう直すか
魅力を全部並べるのではなく、一番刺さるものを1つ選んで、深く伝える。
では、3つの中からどれを選ぶか。
この求人のターゲットは、介護に興味はあるが未経験の人です。その人が最も不安に感じるのは「未経験で本当にやっていけるのか」。
もっと言えば、「この先どうなるのか」が見えないことです。
「休日が多い」は嬉しい情報ですが、「この先」の不安には答えられません。「手当が充実」も同じです。
どちらも入社後の待遇であって、「未経験の自分がどう成長していけるのか」の道筋は見えない。
一方で「資格取得支援」は、その道筋を示せる唯一の情報でした。
「働きながら介護福祉士を目指せる」と書けば、未経験者の頭に「入社→実務→資格取得」という流れが浮かびます。だからこれを軸に据えました。
変更後:
入社時点で資格は必要ありません。
働きながら介護福祉士の資格取得を目指せる支援制度があり、実務者研修の費用は会社が補助します。実際に、未経験から入社したスタッフも活躍しています。
年間休日119日・残業月8時間なので、勉強の時間も確保しやすい環境です。
変えたポイントは2つです。
魅力を1つに絞った
「休日」「手当」「資格支援」を並列で並べるのではなく、ターゲットに最も刺さる「資格取得支援」を主役にして、「休日」はそれを補強する情報として組み込んでいます。
抽象的な表現を具体に変えた
「安心して働ける環境」ではなく、「実務者研修の費用は会社が補助」。「スキルアップが叶う」ではなく、「介護福祉士の資格取得を目指せる」。具体的な事実だけが、求職者の不安を解消します。
添削ポイント④:職場の雰囲気——「和やか」「アットホーム」では何も伝わらない
求人票の中に、こんな記載がありました。
変更前:
和やかで和気あいあいとした雰囲気です。一度退職した社員の出戻り入社等もあり、居心地の良さが特徴の風土です。
「和やかで和気あいあい」
採用に関わっていると、求職者から「求人票を見ても会社ごとの違いがわからなかった」と言われることがあります。
その原因の多くが、この手の表現です。
「家庭的な雰囲気」「アットホームな職場」「スタッフ同士の仲が良い」
言葉は少しずつ違いますが、言っていることは全部同じです。書いている側は、本心で書いていると思います。実際に良い職場なのでしょう。
でも、求職者から見ると、どの会社も同じことを言っている。「和やか」も「アットホーム」も、もはや介護業界の定型文になっていて、読んでも何も伝わらない。
問題は、形容詞で雰囲気を「説明」しようとしていることです。
「和やかです」と言われて、具体的にどんな職場かイメージできるでしょうか。
食事は一緒に食べるのか。
困ったときに相談できる人はいるのか。
業務量は偏っていないか。
求職者が本当に知りたいのは、そういう具体的なことです。
どう直すか
形容詞をやめて、事実を並べる。
この会社の求人票には、実は良い情報がありました。
食事会やサークル活動があること。
携帯電話で先輩にすぐ相談できること。
業務スケジュールが個別に作成されていること。
これらは元の求人票にも書かれていましたが、「和やかで和気あいあい」の後に埋もれていました。
形容詞の後ろに置くのではなく、事実そのものを前に出す。
変更後:
スタッフ同士の食事会やサークル活動があります。現場で困ったことがあれば、支給される携帯電話ですぐに先輩スタッフに相談できます。
業務が一人に偏らないよう、スタッフごとに業務スケジュールを作成。誰が・いつ・何をするかが明確なので、「自分だけ大変」という不満が生まれにくい仕組みになっています。
「和やか」とは一言も書いていません。でも、読んだ後に「この職場、雰囲気良さそうだな」と感じませんか。
食事会がある。
すぐ相談できる。
業務が偏らない仕組みがある。
この具体的な事実の積み重ねが、「和やか」という形容詞よりもはるかに強い説得力を持ちます。
求職者は「和やかです」と言われても信じません。でも、事実を見せられると自分で判断できます。
この求人票から学べること
今回の求人票は、情報が足りなかったわけではありません。条件も良く、出戻り社員というエピソードまであった。
ただ、それが「介護業界の求人票によくある言葉」の中に埋もれていました。
導入で書いた通り、介護の求人票はどの会社も同じ言葉を使っています。
「未経験歓迎」「丁寧な指導」「アットホーム」
その中に自社の求人票が紛れてしまうと、どれだけ良い会社でも「他と同じ」に見えてしまう。
今回の添削で意識したのは、その「同じ」から抜け出すための3つのことです。
1. タイトルには「この会社にしかない情報」を入れる
条件を並べるだけでは、他の介護求人と見分けがつきません。「一度辞めた社員が戻ってくる」のように、この会社だけが言える事実をタイトルに入れる。それだけで、求人一覧の中で目に留まる確率は変わります。
2. 魅力は絞る。全部並べると全部消える
◎で3つ並べると、どれも印象に残らない。ターゲットが一番不安に感じていることを考えて、そこに刺さる1つを選んで深く書く。残りは補強に回す。
3. 形容詞を事実に置き換える
「和やか」「アットホーム」は介護業界の定型文です。その言葉を削って、代わりに「食事会がある」「すぐ相談できる」「業務が偏らない仕組みがある」と書く。求職者は形容詞ではなく、事実を見て判断します。
「同じ言葉」を「自社だけの言葉」に変える。やっていることはそれだけです。でも、それだけで求人票の印象はまったく変わります。
他の業界の求人票でも同じ視点で添削しています。業界別の事例は以下からご覧ください。
御社の求人票も、無料で診断します
ここまで読んで、「うちの求人票も同じ言葉で書いてしまっているかもしれない」と感じた方へ。
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御社の求人票の「何が問題で、どう直せばいいのか」を具体的にフィードバックします。
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この記事を書いた人:Create Match 中小企業向けダイレクトスカウト代行・採用サポーター。「建設業×施工管理×地方」という最も反応が取りにくい条件で、業界平均3.5倍の返信率を実現。中小企業の採用を、求人票の設計から支援しています。
