2025年10月、ビズリーチに「スカウトメッセージAIカスタマイズ機能」が登場しました。
テンプレートを選んでボタンを押すだけで、AIが候補者の経歴を読み取り、文面をパーソナライズしてくれる。
「これで返信率が上がるかもしれない」と期待した方も多いのではないでしょうか。
私も期待しました。
建設業×施工管理×地方×従業員約20名。スカウトを送っても返信率1%を切るのが当たり前の条件です。
AIが文面を最適化してくれるなら、少しでも返信が増えるのではないか。
実際に使ってみました。
結論から言うと、AIスカウト機能には明確な「守備範囲」があります。
変えてくれる部分と、変えてくれない部分がある。
そして、返信率に最も影響するのは、AIが変えてくれない部分でした。
この記事では、AIスカウト機能を実際に使った結果をもとに、「AIが何を変えてくれて、何を変えてくれないのか」を具体的に整理します。
その上で、「自社のスカウトのどこを人が設計すべきか」を判断できる状態を作ることを目指します。
ビズリーチAIスカウト機能は何をしてくれるのか
まず、機能の概要を整理します。
ビズリーチの「スカウトメッセージAIカスタマイズ機能」は、企業が設定したスカウトテンプレートをもとに、AIが候補者ごとの文面を自動生成する機能です。
使い方はシンプルです。
- スカウトを送りたい候補者を選ぶ
- 送信画面でテンプレートを選択し、「AIカスタマイズ」ボタンを押す
- 約5秒でAIが文面を生成する
- 内容を確認・修正して送信する
ビズリーチの公式によると、16年分の転職市場データを学習した「ビズリーチAI」が、候補者の職務経歴書と求人情報を分析して文面を自動生成するとされています。候補者ごとのパーソナライズと、文面作成の時間短縮が主な効果です。
特に中小企業にとっては魅力的に聞こえます。専任の採用担当がいない会社では、スカウト文を1通ずつ作り込む時間がそもそもない。AIがそこを肩代わりしてくれるなら、大きな助けになるはずです。
では、実際に使ってみるとどうなるのか。
テンプレートが具体的にどう変わるかを、次のセクションで見ていきます。
実際に使ってわかった、AIが変えること・変えないこと
ここからは、実際にAIカスタマイズ機能を使った結果をもとに話します。
2つのテンプレートで、それぞれ異なる候補者に対してAIカスタマイズを実行しました。
結論として、AIが変える部分と変えない部分には明確な線があります。
AIが変えてくれること
AIが手を加えるのは、テンプレートの冒頭1〜2文です。
候補者の職務経歴書からキーワードを拾い、テンプレートに差し込む形で文面を生成します。
たとえば、テンプレートに「以下のご経験に強く惹かれました」という箇所があった場合、AIはそこに候補者の経歴から抽出した内容を入れてくれます。
ある候補者には「建築現場での資材搬入や運搬業務」「機械の点検や修理の経験」。
別の候補者には「飲食業界での店舗運営やマネジメントの経験」。
テンプレートをそのまま送るよりは、確実にパーソナライズされた印象になります。
生成にかかる時間は約5秒。ボタン1つでここまでやってくれるのは、効率化ツールとしては間違いなく便利です。
AIが変えてくれないこと
一方で、AIが一切手をつけない部分があります。
件名は変わりません。テンプレートに設定した件名がそのまま使われます。
文面の構成も変わりません。どこに何を書くか、どんな順番で伝えるか。テンプレートの骨格はそのまま残ります。
クロージングも変わりません。「カジュアルにお話ししませんか」で終わる構造を、AIが設計し直すことはありません。
つまり、AIが手を加えるのはテンプレートのごく一部。冒頭の経歴言及だけです。
もう一つの問題——AIの抽出の質
AIが変えてくれる冒頭部分にも、実務で使うには気になる点がありました。
1つ目は、抽出が抽象的だということです。
ある候補者に対して、AIはこう書きました。
飲食業界での店舗運営やマネジメントの経験において、真摯に業務に取り組まれてきた姿勢に、当社の未来を担う大きな可能性を感じたからです。
「飲食業界での店舗運営やマネジメント」。
受け取った候補者からすれば、「具体的に何の経験のこと?」となります。
10名のスタッフを束ねていたのか、売上管理をしていたのか、仕入れの交渉をしていたのか。プロフィールにはもっと具体的な情報が書いてあるはずです。
でもAIは、それを「飲食業界での店舗運営やマネジメント」とひとまとめにしてしまう。
これでは「プロフィールをちゃんと読んでくれた」とは感じにくい。
冒頭で「自分向けではない」と判断されれば、その先にどれだけ良い情報が書いてあっても読まれません。AIが変えてくれる冒頭部分ですら、そのままでは離脱を防げないということです。
2つ目は、候補者の意思を勝手に決めつけてしまうことです。
同じ候補者への生成文に、こんな一文がありました。
飲食業界での経験を活かし、建設業界で新たな挑戦をしたいと考えているのであれば、ぜひお話を聞いていただければと思います。
「建設業界で新たな挑戦をしたいと考えているのであれば」。
本人がそう考えているかどうかはわかりません。飲食業界で転職先を探しているかもしれないし、まったく別の業界を見ているかもしれない。
AIが候補者の意思を前提として書いてしまうと、「この会社は自分のことを見ていない」と感じさせるリスクがあります。
ここまでのまとめ
AIカスタマイズ機能は、「テンプレートをそのまま送るよりはマシ」にしてくれるツールです。
ただし、「この人だから送っている」と候補者に感じさせるレベルのパーソナライズは、現時点ではまだ人にしかできません。
では、AIが変えてくれない部分(件名、構成、クロージング)は、なぜそんなに重要なのか。
次のセクションで、返信率との関係を見ていきます。
AIが手をつけない部分こそ、返信率を左右する——では人は何を設計すべきか
AIが変えてくれるのは冒頭の1〜2文。では、変えてくれない件名やクロージングは、返信率にどう影響するのか。
結論から言うと、返信率を最も左右するのは、AIが手をつけない部分です。
ここでは、件名とクロージングのそれぞれについて「なぜ重要か」と「人は何をすべきか」をセットで整理します。
件名——開封されなければ、すべてが始まらない
スカウトが返信に至るまでには、ステップがあります。
まず件名を見て開封するかを決める。
次に冒頭を読んで先を読むかを決める。
最後まで読んで返信するかを決める。
この最初のステップ、「開封」を左右するのが件名です。
件名で開封されなければ、AIがどれだけ冒頭をパーソナライズしても、その文面は読まれません。
特に中小企業にとって、件名の設計は生命線です。
ビズリーチの受信一覧には会社名が表示されます。大手なら社名の時点で「開けてみよう」となる。
でも中小企業の場合、知らない社名が並んでいる中で、件名だけが開封の判断材料になります。
その件名を、AIは一切変えてくれません。
だからこそ、件名は人が設計する必要があります。
件名を設計するには、「この候補者の受信一覧に、他社のスカウトがどう並んでいるか」を想像する必要があります。その中で自社のスカウトが違って見えるかどうか。この判断は、AIには難しい。
クロージング——「カジュアルに話しませんか」の先にあるもの
最後まで読んでもらえたとして、次のハードルは「返信する」という行動そのものです。
多くのスカウトは「まずはカジュアルにお話ししませんか?」で終わっています。AIカスタマイズを使っても、この部分は変わりません。
でも求職者の立場で考えてみてください。
「カジュアルに話しませんか」と言われて、どう返信すればいいのか。
「ありがとうございます。ぜひお話しさせてください」と自分で文章を打って、送信ボタンを押す。
仕事の合間にスマホでスカウトを見ている人にとって、この「文章を考える」という動作は意外と大きなハードルです。
「ちょっと気になるな」と思っても、返信の文面を考えるのが面倒で、あとで返そうと思ってそのまま忘れる。
この「返信の動作コスト」を下げる設計は、AIの守備範囲外です。
だからここも人が設計する。
「カジュアルに話しませんか」の代わりに、候補者が聞きたいであろう質問をあらかじめ用意して、番号だけで返信できる形にする。返信の動作コストをゼロにするこの設計は、テンプレートの段階で人が作り込む必要があります。
冒頭のパーソナライズも、最終的には人の仕事
AIが「飲食業界での店舗運営やマネジメント」と拾ってきたキーワードを、「10名のスタッフのシフト管理を3年間担当された経験」のように具体化する。この一手間が、「プロフィールをちゃんと読んでくれている」という印象を作ります。
AIが拾ったキーワードをそのまま使うのではなく、出発点として扱い、人が具体化する。この使い方であれば、AIは効率化のツールとして十分に機能します。
全員がAIを使う時代に何が起きるか
もう一つ、構造的な問題があります。
AIスカウト機能を使う企業が増えれば、冒頭のパーソナライズは「当たり前」になります。
これ自体は良いことです。テンプレートをそのまま一斉送信するよりは、はるかにマシです。
ただし、全員が同じAIで同じレベルのパーソナライズをするようになると、結局また「全部同じに見える」状態が生まれます。
業界大手のスカウト代行企業の代表も、「文面自動生成は他社と似てしまう可能性がある。テンプレ感が出て返信率が落ちるリスクがある」と指摘しています。
求職者の受信箱が、似たようなAI生成スカウトで埋まる時代がすぐそこに来ている。
そのとき差がつくのは、AIが設計しない部分です。
件名で他社と違って見えるか。クロージングで返信の動作コストが下がっているか。
ここは、AIがどれだけ進化しても、人が設計する領域です。
実績での裏付け
私はAIスカウト機能を使わず、件名・冒頭・クロージングをすべて人の手で設計しています。
建設業×施工管理×地方×従業員約20名という条件で、経験者だけに絞った約5ヶ月間の配信で、同条件平均の約3.5倍の返信率を出しました(同条件平均はビズリーチ担当者ヒアリングによる)。
この返信率を支えたのは、件名の設計、冒頭のパーソナライズ、クロージングの行動設計。つまりAIが手をつけない3つの部分です。
件名・冒頭・クロージングをそれぞれどう設計したかの具体的な考え方は、以下の記事で解説しています。
中小企業にとっての意味
大企業はAIで大量にスカウトを送れます。数百通、数千通を送り、A/Bテストで最適化していく。
中小企業が同じ土俵で戦っても勝てません。送信数が限られている以上、1通あたりの質で勝負するしかない。
ただし、これは不利なだけではありません。
送信数が少ないからこそ、1通1通に手間をかけられる。候補者のプロフィールを読み込み、件名を個別に設計し、冒頭で具体的な評価を伝え、返信しやすいクロージングを用意する。
AIで効率化できる部分はAIに任せる。浮いた時間を、件名・冒頭・クロージングの設計に使う。
これが中小企業の戦い方です。
ただし、限界もあります
設計を変えれば返信率は上がります。ただし、条件が相場から大きく外れている場合は、設計だけではカバーできません。
同じ職種の相場が月給25万円なのに月給18万円であれば、どんなに件名やクロージングを工夫しても厳しい。
設計で変えられるのは、「条件は相場内なのに、伝え方で損しているケース」です。
自社がどちらに当てはまるのかを見極めた上で、設計で変えられる部分に集中する。この切り分けが前提です。
テンプレ通りにやっても返信率が上がらない構造的な理由と、同条件平均の約3.5倍を出した設計の考え方は、以下の記事で解説しています。
まとめ
この記事では、ビズリーチのAIスカウト機能を実際に使った結果をもとに、AIが変えてくれること・変えてくれないことを整理しました。
ポイントを振り返ります。
AIが変えてくれること
テンプレートの冒頭1〜2文。
候補者の経歴からキーワードを拾い、差し込んでくれます。効率化ツールとしては便利です。
AIが変えてくれないのはこと
件名、文面の構成、クロージング。
テンプレートに設定したものがそのまま使われます。
そして、返信率に最も影響するのは、AIが変えてくれない部分です。
件名で開封されなければ本文は読まれない。クロージングで返信のハードルが下がっていなければ、「気になったけど、あとでいいか」で終わる。
AIを否定する話ではありません。AIに任せられる部分はAIに任せて、浮いた時間を件名・冒頭・クロージングの設計に使う。この切り分けができるかどうかで、同じ機能を使っても結果は変わります。
まずは、自社のスカウトテンプレートでAIカスタマイズを1回試してみてください。
生成された文面を見て、件名が変わったかどうか。クロージングが変わったかどうか。
変わっていない部分が、あなたが設計すべき場所です。
御社のスカウト、無料で診断します
AIの守備範囲はわかった。人が設計すべきポイントもわかった。
でも、自社のスカウトの件名・冒頭・クロージングを具体的にどう変えればいいかは、毎日送っている本人には見えにくいものです。
Create Matchでは、無料でスカウト文面・求人票の診断を行っています。
件名が受信一覧で埋もれていないか。冒頭で「自分のことを見てくれている」と感じさせられているか。クロージングで返信の動作コストが下がっているか。
この記事で解説した視点から、具体的な改善ポイントをフィードバックします。
無理な営業は一切しません。「一度プロに見てもらいたい」という方は、お気軽にお申し込みください。
この記事を書いた人:Create Match 中小企業向けダイレクトスカウト代行・採用サポーター。「建設業×施工管理×地方」という最も反応が取りにくい条件で、業界平均約3.5倍の返信率を実現。中小企業の採用を、求人票の設計から支援しています。
