清掃スタッフの求人票を何件も読んでいて、気づいたことがあります。
「創業○年の安定企業」「大手との取引多数」
安定感を打ち出す会社はある。でも、会社の成長を数字で語っている求人票はほとんどありません。
そもそも清掃業界で「毎年売上が伸び続けている」と言える会社は多くない。言えるとしたら、それは求人票に書ける大きな武器です。
今回取り上げるのは、従業員約50名のビルメンテナンス会社の求人票です。
数年連続で売上130〜170%の成長。毎月過去最高業績を更新している。
この会社は、成長の数字を持っていました。
でも、求人票に書いてあったのは「業績好調◎」の一言だけ。
しかも、その成長が求職者にとって何を意味するのかの説明がどこにもない。
「だから自分の仕事はどうなるのか」
「忙しくなるだけじゃないのか」
数字はある。でも、その数字が求職者の言葉に翻訳されていない。
今回は、この求人票の良い点を押さえたうえで、「会社の数字を、求職者の生活に届く言葉に変えるには何をどう直せばいいか」を具体的に添削していきます。
※実在の求人票をもとに業界・条件・企業情報等を変更したモデルケースです。実在の特定企業を指すものではありません。
今回の会社と求人票について
まず、今回モデルにした会社の概要です。
- 業界:ビルメンテナンス(アパート・マンション共用部の巡回清掃)
- 従業員数:約50名
- 所在地:関東
- 採用体制:人事専任者なし
- 採用媒体:求人サイトに掲載
従業員50名の、清掃に特化した会社です。
そして、求人票の内容はこうでした。
- 職種:清掃スタッフ(未経験歓迎)
- 年収:300〜396万円(月給28〜33万円、昇給年1回)
- 年間休日:120日(完全週休二日・土日祝休み)
- 残業:固定残業40時間分を含む(60,000円)
- 特徴:直行直帰OK、社用車貸与、管理職・幹部へのキャリアパスあり
条件面は悪くありません。完全週休二日で土日祝休み、年間休日120日。
会社は数年連続で売上130〜170%の成長を続けていて、キャリアパスも用意されている。
条件や会社の勢いに問題があるわけではない。求人票の「伝え方」に改善の余地がある、ということです。
まず、この求人票の良い点
添削に入る前に、この求人票の良い点も伝えておきます。
未経験者の受け入れ実績が具体的
「未経験歓迎」と書くだけの求人票は多いですが、この会社は前職の例として介護スタッフ、お笑い芸人、温泉施設のフロントと具体的に挙げています。
実際に異業種から入った人がいるという事実は、「歓迎」の一言より説得力があります。
会社の成長を裏付ける数字がある
数年連続で売上130〜170%成長。毎月過去最高業績を更新している。
こうした数字を持っている中小企業は多くありません。
求人票に書ける材料として、大きな武器です。
キャリアパスが明示されている
清掃スタッフからスタートして、管理職や幹部として採用・育成・サービス改善に関わる道がある。
「ずっと現場」ではないキャリアの見通しが書かれている点は、他社にはない強みです。
この会社には、他の清掃会社にはない数字と実績がそろっています。
- 未経験者の受け入れ実績
- 毎年130〜170%の成長率
- 管理職・幹部へのキャリアパス
ただ、導入で触れた通り、その数字が求職者の言葉に翻訳されていない。
「売上130〜170%成長」は会社の話です。求職者が知りたいのは「だから自分はどうなるのか」。その変換がないまま、数字だけが求人票に置かれている状態です。
では、具体的にどこが問題なのか。1つずつ見ていきます。
添削ポイント①:条件で差がつかないなら、タイトルには「この会社を選ぶ理由」を入れる
清掃スタッフの求人票を何件も読んでいると、タイトルに並ぶ言葉がほとんど同じであることに気づきます。
「未経験歓迎」「転勤なし」「直行直帰」「完全週休二日」
一見、条件が充実しているように見えます。でも、清掃業界ではこれらは珍しくない。転勤なし・直行直帰は現場に直接向かう仕事の性質上、ほぼ当たり前。未経験歓迎もほとんどの会社が書いています。
今回の求人票のタイトルは、こうなっていました。
変更前:
清掃スタッフ◆転勤無し/現場へ直行直帰可/業績好調◎/完全週休二日制(土日祝)

情報はちゃんと入っています。条件も書いてある。
では何が問題か。
タイトルに並んでいる言葉のほとんどが、他の清掃求人にも書いてあるということです。
「転勤無し」「直行直帰可」は清掃業界では一般的な働き方です。タイトルの先頭に置いても、求職者の目には止まりません。
一方で「業績好調◎」は、この会社の強みに触れようとしている。方向は正しい。
でも「業績好調」はどの会社でも言える言葉です。具体性がない。
この会社には「数年連続で売上130〜170%成長」「毎月過去最高業績を更新」という、他社には書けない数字がある。なのに、タイトルには「業績好調◎」としか書かれていない。
清掃業界の求人票を見ていると、タイトルに会社の成長を具体的な数字で入れている求人はほぼありません。「創業○年」「大手との取引多数」で安定感を見せる会社はあっても、成長率を出している会社はまれです。
つまり、数字を出すだけで他のすべての清掃求人と違って見える。
どう直すか
変更後:
土日祝休みの清掃スタッフ|毎年売上更新中の成長企業|未経験から管理職を目指せる

タイトルに何を入れるかを考えるとき、まず「この業界では何が珍しいか」を調べました。
清掃業界はシフト制の会社が多い中で、土日祝が完全に休みという会社は多くはありません。いくらか求人票を見た中でも、土日祝休みを明記していたのは一部だけでした。
だから「土日祝休み」を先頭に置きました。業界の中で珍しい条件なら、タイトルに入れる価値がある。
次に「毎年売上更新中の成長企業」。
元の「業績好調◎」を具体的にしただけです。でも印象はまったく違う。
「業績好調」は自己申告。「毎年売上更新中」は事実。清掃業界の求人タイトルでこの言葉を使っている会社はほぼないので、それだけで目が止まります。
最後に「未経験から管理職を目指せる」。
「未経験歓迎」はどの会社も書いている。でも「未経験から管理職を目指せる」と書いている求人はほとんどない。同じ未経験でも、「入口の話」で終わるか「その先のキャリア」まで見せるかで、受け取り方が変わります。
添削ポイント②:冒頭がタイトルの繰り返しで、新しい情報がない
タイトルで「土日祝休み」「成長企業」「管理職を目指せる」を見た求職者は、「清掃でこの条件、ちょっと気になるな」と思ってクリックしています。
その期待を持って開いた先に、求職者が最初に目にするのが冒頭の2〜3行です。
今回の求人票の冒頭は、こうなっていました。
変更前:
~未経験大歓迎!数年連続で売上130%~170%事業成長/社員を大事にする会社/若手活躍中◎丁寧な指導あり/学歴不問/転勤なし~

タイトルで見た情報がそのまま繰り返されています。
「未経験歓迎」「転勤なし」「学歴不問」
どれもタイトルで見た内容の繰り返し。
求職者はすでにその情報を見てクリックしているのに、また同じことが出てくる。開いた先に同じ情報が並んでいたら、「これ以上読んでも新しいことはなさそうだ」と離脱されます。
そしてもう1つ。
「未経験大歓迎」「丁寧な指導あり」「若手活躍中」
清掃業界の求人票を何件も読みましたが、この3つはほぼすべての会社が書いていました。どの会社も「未経験歓迎」を入れていて、研修やOJTの記載もほとんどの求人にある。つまり、これらの言葉では他社との違いが出ません。
未経験者が本当に知りたいのは「歓迎」されているかどうかではない。「本当に自分でもやれるのか」。その答えが冒頭にない。
実はこの求人票には、その答えになる情報がちゃんとあります。
本文の中に「前職は介護スタッフ、お笑い芸人、温泉施設のフロントなど様々」と書かれている。
これは「未経験歓迎」の何倍も説得力がある情報です。でも、本文の途中に埋もれていて、冒頭には出てきません。
どう直すか
変更後:
前職は介護スタッフ、お笑い芸人、温泉施設のフロント。まったく違う仕事をしていた人たちが、今この会社で清掃スタッフとして活躍しています。
マンツーマンで先輩が現場を一緒に回るところからスタート。清掃の経験がなくても、始められる体制があります。

変えたポイントは2つです。
「未経験歓迎」を、具体的な事実に置き換えた
「未経験歓迎」は会社側の宣言です。求職者にとっては「本当に?」としか思えない。
でも「お笑い芸人をやっていた人が、今ここで活躍している」と聞けば、「まったく違う仕事からでも始められるんだ」と思える。
「歓迎」は宣言。「前職バラバラでも活躍している」は証拠。求職者の不安を消すのは、宣言ではなく証拠です。
ここでやっていることも、①と根っこは同じです。
①では「業績好調◎」という曖昧な言葉を「毎年売上更新中」という事実に変えた。
②では「未経験大歓迎」という宣言を「前職バラバラでも活躍している」という事実に変えた。どちらも、会社の言葉を、求職者が信じられる形に翻訳することです。
「丁寧な指導」を、具体的な場面に翻訳した
「丁寧な指導あり」と書かれても、何がどう丁寧なのかがわかりません。
「マンツーマンで先輩が現場を一緒に回る」と書けば、入社後の自分の姿が具体的にイメージできます。
添削ポイント③:会社の成長実績が「求職者にとって何が嬉しいのか」に翻訳されていない
タイトルと冒頭で興味を持った求職者が、次に知りたいのは「この会社はどんな会社なのか」です。
今回の求人票には、会社の成長を示す情報がいくつか書かれていました。
変更前:
数年連続で売上130%~170%事業成長/毎月過去最高業績を更新/毎年140%の成長
数字はちゃんとある。しかも、中小企業でこの成長率を出せている会社はそう多くありません。
では何が問題か。
この数字を読んで、求職者が何を思うかを想像してみてください。
「すごいな」ではありません。
「忙しくなるだけじゃないの?」です。
会社の成長率がどれだけ高くても、求職者の頭にあるのは「自分の毎日がどうなるか」。その翻訳がないまま数字だけ出しても、「すごい」ではなく「不安」が先に来る。
これが、この記事の導入で触れた問題の本丸です。
数字はある。でも「だから自分にとって何が嬉しいのか」が書かれていない。
実はこの会社の成長には、求職者にとって意味のある構造があります。
成長の理由は「人数を増やして、広いエリアをカバーできる体制を作ったから」。つまり、仕事が増えた分だけ人も増やしている。一人あたりの負担が増えているわけではない。
そして会社が成長しているということは、新しいポジションが生まれるということでもある。実際にこの求人票には「管理職・幹部へのキャリアパス」が書かれています。成長しているからこそ、そのポジションが生まれている。
でも、求人票にはその説明がない。数字だけが並んでいて、「だからあなたにとって何が嬉しいのか」が書かれていない。
どう直すか
変更後:
当社は数年連続で売上130〜170%の成長を続けています。
成長の理由は、対応エリアの広さ。人数を増やしながらカバーエリアを広げてきたことで、取引先が増え続けています。
仕事が増えた分だけ人も増やしているので、一人あたりの担当件数は1日平均6件。無理な働き方にはなりません。
そして会社が大きくなる過程で、現場をまとめるポジションも必要になります。入社後は清掃スタッフとしてスタートし、ゆくゆくはスタッフの採用・育成やサービス改善に関わる管理職・幹部を目指すことができます。
変えたポイントは2つです。
成長の数字に「理由」と「構造」を添えた
「人数を増やしながらエリアを広げた結果」という理由があるだけで、「一人に負担が集中しているわけじゃないんだ」とわかる。
さらに「1日平均6件」という具体的な数字で、働き方のイメージが持てる。
①では「業績好調◎」を「毎年売上更新中」に翻訳した。
②では「未経験歓迎」を「前職バラバラでも活躍」に翻訳した。
③でやっているのはその延長で、「130〜170%成長」を「1日6件・無理な働き方にはならない」に翻訳することです。
どれも、会社の言葉を求職者の生活に届く言葉に変える作業です。
成長と求職者のキャリアをつなげた
「会社が成長している」→「新しいポジションが生まれる」→「管理職・幹部を目指せる」
この因果関係を書くことで、成長が求職者自身のメリットになる。
元の求人票にも「管理職・幹部へのキャリアパス」は書かれていました。でも、会社の成長とのつながりが説明されていないため、「本当にそんなポジションがあるの?」と思われかねない。
成長しているからポジションが生まれる。この一文があるだけで、キャリアパスの信頼度が上がります。
添削ポイント④:固定残業40時間が「不安要素」としてむき出しになっている
ここまで①②③で、タイトル・冒頭・魅力の見せ方を変えてきました。求職者がこの求人票に興味を持ち、「もっと知りたい」と思って読み進めている状態です。
最後に条件面を確認します。
今回の求人票には、こう書かれていました。
変更前:
月額(基本給):220,000円~270,000円
固定残業手当/月:60,000円(固定残業時間40時間0分/月)
月給:280,000円~330,000円
「固定残業40時間」。
ここまでせっかく興味を持って読み進めてきた求職者が、この数字を見た瞬間に考えるのは「毎月40時間も残業するの?」です。
固定残業の数字は、背景がなければ「それだけ残業させられる」としか読まれない。
清掃業界の求人票を見ていても、固定残業を入れている会社はあります。でも、なぜその時間数なのか、実態として残業がどのくらい発生しているのかを説明している求人はほぼありませんでした。
「固定残業40時間」の印象は、背景があるかないかでまったく変わります。
たとえば、直行直帰の移動時間を含んでいるのか。実際の残業は月何時間なのか。それとも繁忙期に備えた余裕なのか。
会社としては制度設計上の理由があるはずです。でも求職者にはその背景が見えない。見えないから、数字だけが不安を生む。
これも①②③と同じ構造です。会社の制度設計の理由が、求職者の言葉に翻訳されていない。
どう直すか
変更後:
月給:280,000円~330,000円(基本給+固定残業手当含む)
※固定残業手当は40時間分(60,000円)を含んでいますが、現場への直行直帰という働き方のため、事業場外みなし労働時間制を採用しています。1日の訪問は平均6件で、極端な長時間労働にはなりません。超過分は別途支給します。
変えたのは1つだけです。
数字の直後に、背景を一文添えた。
「固定残業40時間」はそのまま残しています。数字を変えることはできません。
でも、その数字の意味を一文で説明するだけで、求職者の受け取り方は変わります。
「40時間も残業するのか」→「移動時間を含んでいるのか。実際はそんなに多くないんだな」
①では「業績好調◎」に具体的な数字を入れた。
②では「未経験歓迎」に証拠を添えた。
③では「130〜170%成長」に「だからあなたにとって何が嬉しいか」を添えた。
④では「固定残業40時間」に背景を一文添えた。
全部やっていることは同じです。数字や言葉を、求職者が受け取れる形に翻訳する。
条件面を変えることはできない。でも、その条件を「何と一緒に見せるか」は変えられます。不安を生む数字ほど、背景の一文が効きます。
この求人票から学べること
今回の求人票は、材料が足りなかったわけではありません。売上130〜170%成長、未経験者の受け入れ実績、管理職へのキャリアパス。他の清掃会社にはない数字と事実がそろっていました。
ただ、その数字が「会社の話」のまま止まっていた。
導入で書いた通り、清掃業界の求人票には成長を数字で語っている会社がほとんどありません。この会社はその数字を持っていた。でも「業績好調◎」の一言で済まされていて、「だから求職者にとって何が嬉しいのか」が翻訳されていなかった。
今回の添削で①から④まで一貫してやったのは、1つのことです。
会社の言葉を、求職者が受け取れる言葉に翻訳する。
①では「業績好調◎」を「毎年売上更新中」に変えた。曖昧な自己申告を、事実に。
②では「未経験大歓迎」を「前職は介護、お笑い芸人、温泉フロント」に変えた。宣言を、証拠に。
③では「売上130〜170%成長」を「1日6件・無理な働き方にはならない」に変えた。会社の実績を、求職者の生活に。
④では「固定残業40時間」に「移動時間を含んだ設計」と背景を添えた。不安を生む数字を、納得できる数字に。
どれも、情報を「足した」わけではありません。元の求人票にあった情報を、求職者が受け取れる形に変換しただけです。
他の業界の求人票でも同じ視点で添削しています。業界別の事例は以下からご覧ください。
御社の求人票も、無料で診断します
ここまで読んで、「うちの求人票にも、数字はあるのに翻訳できていない部分があるかもしれない」と感じた方へ。
Create Matchでは、無料で求人票の診断を行っています。
「どこを直せばいいか」だけでなく、「御社の強みを求職者にどう届けるか」まで具体的にフィードバックします。
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この記事を書いた人:Create Match 中小企業向けダイレクトスカウト代行・採用サポーター。「建設業×施工管理×地方」という最も反応が取りにくい条件で、業界平均約3.5倍の返信率を実現。中小企業の採用を、求人票の設計から支援しています。
