「中小企業 外国人 採用」で検索すると、出てくるのは統計データと制度解説ばかりです。
外国人労働者は230万人を超えた。
在留資格の種類はこれだけある。
届出はハローワークに出す。
助成金もある。
どれも正しい情報です。
ただ、従業員10〜20名の会社で採用を担当している人が本当に知りたいのは、「うちみたいな会社で、実際にやれるのか」ではないでしょうか。
私自身、中小企業の採用支援をする中で、外国籍の応募者と向き合う機会がありました。
業界経験があり、日本語力も高く、意欲もコミュニケーション力も申し分ない方でした。面談を実施し、社内に強く推薦しました。
しかし、結果は見送り。
能力の問題ではありませんでした。社内の受け入れ体制が整っていなかったのです。
中小企業の外国人採用の最大の壁は、制度でも手続きでもなく、社内の受け入れ体制にある。
この記事では、その経験をもとに、中小企業が外国人採用を検討するときに「制度の前に整えるべきこと」と、「実際に応募が来たときに慌てないための実務知識」をお伝えします。
中小企業にこそ外国人採用が必要になる理由
正直に言えば、私自身も最初は「外国人採用は大企業の話だ」と思っていました。
中小企業の採用支援をしていると、向き合うのは日本人の候補者ばかりです。
求人を出しても応募が来ない。
来ても条件が合わない。
地方の中小企業では、同じポジションを半年以上埋められないことも珍しくありません。
その前提が変わったのは、外国籍の応募者と実際に向き合ったときでした。
業界経験7年、日本語の最高レベルの資格を持ち、面談での受け答えも的確。日本人の未経験者でも、ここまでの人材はなかなかいない。
その方と話して、初めて気づきました。
外国人採用は「大企業がやること」ではなく、中小企業にとって現実的な選択肢だった。
「日本人だけで何とかする」という前提を持ち続ける限り、採用の選択肢はどんどん狭くなります。
少子高齢化で労働人口が減り続ける中、その前提を疑うきっかけが、私にとってはこの応募者との出会いでした。
中小企業だからこそのメリット
もう一つ、この経験を通じて気づいたことがあります。
大企業が外国人を100人採用しても、組織の中では「大勢の中の一人」です。
中小企業で一人の外国人を採用したら、その人の存在感はまったく違います。社内に「外国人と一緒に働いた経験」が生まれる。その経験が、次に外国人の応募が来たときのベースになります。
一人目の実績が、将来の採用体制のベースになる。
これは100人規模の採用をしている大企業では得られない、中小企業ならではの効果です。
ただし、その「一人目」を受け入れるためには、社内の準備が必要です。
次のセクションでは、実際に優秀な外国人が応募してきたのに、その準備ができていなかったために逃した経験をお話しします。
外国人に限らず、求人票の「伝え方」を変えるだけで応募数が変わる原理は、以下の記事で解説しています。
実際に優秀な外国人が応募してきた。でも、採用できなかった
ここからは、私自身が経験した話をします。
業種や人数などの詳細はぼかしますが、起きたことの流れはそのままです。
ある中小企業の求人に、外国籍の方から応募がありました。
その方は母国で同じ業界に7年間従事しており、実務経験は十分でした。来日してからの日本語学習にも真剣に取り組み、日本語能力の最高レベルの資格を取得しています。
オンラインで面談を実施しました。
第一印象から「この人は違う」と感じました。
受け答えが的確で、質問の意図を正確に汲み取る。何より、この仕事をやりたいという意欲が言葉の端々からにじみ出ていました。愛嬌があり、一緒に働く現場の人間とも自然にやっていけるタイプだと感じました。
日本人の未経験者でも、ここまでのやる気・愛嬌・コミュニケーション力を持つ人材はなかなかいません。
面談後、私はこの方を強く推薦しました。
面談レポート、職務経歴書、確認事項への回答、会話の要点をまとめた資料。4点の資料を作成し、社内に提出しました。
資料を渡した後に起きたこと
ところが、資料を受け取った役員が現場の管理職に共有したところ、反応は想定と違っていました。
「外国人」というだけで、ネガティブな印象を持たれたのです。
経歴やスキルの話ではありませんでした。「外国人を受け入れること自体」に対する心理的な抵抗です。
最終的に、書類選考の段階で見送りという判断になりました。
この経験から感じたこと
私としては、もどかしい結果でした。
候補者の能力や意欲に問題があったわけではない。在留資格も確認済みで、制度上の問題もなかった。
見送りの原因は、候補者側ではなく、社内の「受け入れる準備」ができていなかったことでした。
候補者には「社内の総合的な判断」として丁寧にお伝えしました。国籍には触れていません。
ただ、心の中では思っていました。
人材不足が深刻な中小企業で、これだけの人材を国籍だけで逃すのは、大きな機会損失だと。
同時に、こうも思いました。
現場に余裕がなければ、外国人採用は難しい。
採用担当がどれだけ推薦しても、現場で一緒に働く人たちが「受け入れる気持ち」を持っていなければ、通らない。
これは採用担当の説得力の問題ではなく、組織としての準備の問題です。
では、何を準備しておけばよかったのか。
外国人採用の壁は制度ではなく「社内の受け入れ体制」
前のセクションの経験を振り返ったとき、最初に考えたのは「何が足りなかったのか」でした。
在留資格の確認はしていた。手続きの流れも調べていた。候補者とのコミュニケーションも問題なかった。
足りなかったのは、候補者側の準備ではなく、社内側の準備です。
上位記事を読むと、外国人採用の課題として「言語の壁」「文化の違い」「手続きの煩雑さ」がよく挙げられています。もちろんそれも課題ではあります。
ただ、私が経験した現実はもっと手前の話でした。
「外国人と一緒に働く」という選択肢が、そもそも社内の共通認識になっていなかった。(※太字)
採用担当が一人で推薦しても、現場がその前提を共有していなければ、書類の段階で止まります。言語の壁や文化の違いを乗り越える以前に、「受け入れるかどうか」の議論すらされないまま終わる。
これが、制度や手続きよりも先に立ちはだかる壁です。
では、何を準備しておけばよかったのか
振り返って思うのは、3つのことです。
1. 経営レベルで方針を決めておく
「外国人の応募が来たらどうするか」を、応募が来てから考えるのでは遅い。
私のケースでは、候補者が応募してきてから初めて社内で外国人採用の話が出ました。現場の管理職にとっては突然の話です。準備も心構えもない状態で「この人を面接しませんか」と言われても、防衛的な反応になるのは自然なことかもしれません。
事前に「外国人の応募が来る可能性がある。そのとき、どういう基準で判断するか」を経営者と現場で話しておく。
それだけで、実際に応募が来たときの反応は変わるはずです。
2. 現場が「外国人と働くイメージ」を持てるようにする
心理的な抵抗の多くは、「知らないこと」から来ます。
外国人と一緒に働いた経験がない人にとって、「外国人が入ってくる」というのは未知の変化です。
言葉は通じるのか。
文化の違いでトラブルにならないか。
自分の仕事が増えるのではないか。
これらの不安は、情報がないから膨らみます。
他の中小企業で外国人を採用した事例を共有する。
在留資格の仕組みを簡単に説明する。
「日本語能力の最高レベルを持っている人なら、日常のコミュニケーションは問題ない」という事実を伝える。
大がかりな研修は必要ありません。経営者や採用担当が、折に触れて情報を共有するだけで、現場の心理的ハードルは下がります。
ハードルが下がれば、実際に応募が来たときに書類の段階で止まらず、面接まで進められる。会えば印象が変わる可能性がある。
私のケースでも、資料だけでなく本人と話す機会があれば、違った結果になっていたかもしれません。
3.「まず会ってもらう」仕組みを作る
私のケースでは、書類選考の段階で見送りになりました。現場の管理職は、候補者の経歴や資格は資料で見ましたが、本人と話す機会はありませんでした。
資料だけでは「外国人」という属性が先に立ちます。
でも、実際に会って話せば印象は変わる可能性があります。
面談で感じた「この人は違う」という感覚は、資料では伝わりません。
書類で判断するのではなく、面接まで進める仕組みを事前に決めておく。
「外国人の応募者は、書類だけで判断せず、原則として面接まで実施する」というルールを一つ決めておくだけで、会わずに逃すリスクは減ります。
面接の場で候補者の心をつかむ設計については、以下の記事で解説しています。
この3つに共通しているのは、どれも「応募が来る前にできること」だという点です。
応募が来てから慌てて社内を説得するのは、採用担当にとっても候補者にとっても不幸な展開です。
外国人採用を「やるかやらないか」は、応募が来てから決めることではありません。「来たときにどう対応するか」を、事前に決めておく。
それでも準備しておくべきこと ── 制度・手続きの実務ガイド
社内の受け入れ体制が最大の壁だと書きました。それは事実です。
ただ、「制度や手続きは大丈夫なのか」という不安も、外国人採用をためらう理由の一つではあります。
正直に言えば、私も最初はそうでした。
在留資格、入管への届出、雇用契約の注意点。
聞き慣れない言葉が並ぶと、それだけで「うちには無理だ」と感じます。
でも、実際に調べてみると、手続き自体は思ったほど複雑ではありませんでした。
私が今回のケースで調べて「これだけ押さえておけば慌てない」と感じたポイントを、3つに絞ってお伝えします。
1. 在留カードを確認する
外国人を採用するとき、最初に確認するのは在留資格です。
候補者の在留カードを見せてもらえば、資格の種類と有効期限がわかります。
中小企業が中途採用で出会うことが多いのは「技術・人文知識・国際業務」という資格です。
エンジニア、営業、マーケティングなど、オフィスワーク系の業務がこれに該当します。
大事なのは、「この資格で、自社の業務に就けるか」を確認すること。
判断に迷ったら、候補者本人に入管へ確認してもらうのが最も確実です。
私のケースでも候補者本人に入管への確認を依頼しました。
「候補者のことを思っての確認です」と伝えれば、ネガティブに受け取られることはありません。数日で「問題ない」という回答が返ってきました。
2. ハローワークへの届出を忘れない
外国人を雇い入れたら、ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を提出します。
期限は雇い入れた翌月の10日まで。社会保険・労働保険の加入は日本人と同じです。
雇用契約書は、日本人と同等以上の給与条件にすること。これは法律上の要件です。
3. 行政書士への相談は内定後で十分
在留資格の変更や就労資格証明書の申請が必要になる場合、行政書士に相談するとスムーズに進みます。
ただし、相談のタイミングは内定後で十分です。「外国人採用を検討している段階」で費用をかける必要はありません。内定を出してから動いても間に合います。
制度は壁にならない
この3つを見ていただければわかる通り、一つひとつは定型的な作業です。
制度や手続きが原因で外国人採用を諦める必要はありません。
本当に難しいのは前のセクションで書いた「社内の受け入れ体制」です。
制度は調べれば答えが出ます。でも、現場の心理的なハードルは、情報だけでは解決しません。
だからこそ、順番が大事です。
制度を先に調べて安心するのではなく、まず社内の方針を決める。その上で、制度や手続きの知識を備えておく。
この順番で準備すれば、優秀な外国人が応募してきたとき、慌てずに対応できます。
まとめ
中小企業の外国人採用が進まない理由は、制度が複雑だからでも、手続きが大変だからでもありません。
この記事でお伝えしたのは、3つのことです。
中小企業こそ、外国人採用が必要になる
日本人の若手が来ない現実は、今後さらに厳しくなります。「日本人だけで何とかする」という前提を持ち続けると、採用の選択肢がどんどん狭くなる。一人目の実績が、将来の採用体制のベースになります。
最大の壁は、社内の受け入れ体制
優秀な外国人が応募してきても、社内が準備できていなければ逃します。経営レベルで方針を決め、現場が「外国人と働くイメージ」を持てるようにしておく。応募が来てから慌てるのではなく、来る前に準備する。
制度や手続きは、調べれば対応できる
在留カードの確認、ハローワーク届出、行政書士への相談。一つひとつは定型的な作業です。制度が原因で諦める必要はありません。
外国人採用の壁は制度ではなく、社内の受け入れ体制にある。順番を間違えなければ、中小企業でも十分に対応できます。
まずは一つだけやってみてください。
次の経営会議や現場との打ち合わせで、「外国人の応募が来たらどうするか」を議題に挙げる。
結論が出なくても構いません。「話したことがある」という事実が、実際に応募が来たときの対応を変えます。
外国人採用に限らず、スカウトの設計で候補者との接点を増やす方法は、以下の記事で解説しています。
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この記事を書いた人:Create Match 中小企業向けダイレクトスカウト代行・採用サポーター。「建設業×施工管理×地方」という最も反応が取りにくい条件で、業界平均約3.5倍の返信率を実現。中小企業の採用を、求人票の設計から支援しています。
